オープンイノベーションとは何か

オープンイノベーションとは、イノベーションを創出するための手段です。2003年にヘンリー・チェスブロウ氏が公表した「OPEN INNOVATION―ハーバード流イノベーション戦略のすべて (Harvard business school press)」から、この概念が広まったとされています。

その後、2010年に内閣府がオープンイノベーションを再定義しましたが、そこには以下のように記されています。

「オープン・イノベーションとは」(内閣府より)
(必要により失敗を内生化するエクイティ・ファイナンスと外部のベンチャー企業群も活用し、)自社内外のイノベーション要素を最適に組み合わせる(mix & match)ことで新規技術開発に伴う不確実性を最小化しつつ新たに必要となる技術開発を加速し、最先端の進化を柔軟に取り込みつつ、製品開発までに要する時間(Time to market)を最大限節約して最短時間で最大の成果を得ると同時に、自社の持つ未利用資源を積極的に外部に切り出し、全体のイノベーション効率を最大化する手法。

▶ 出典:「オープン・イノベーションを再定義する」(2010年4月)

一言では説明しにくい概念なので、次章からオープンイノベーションが生まれた基礎的な知識や経緯を解説していきます。

オープンイノベーションの概念が生まれた理由

オープンイノベーションの概念は、端的に表現すると「自社以外のパートナーと連携し、共に新たな価値を創出すること」です。

オープンイノベーションという概念が生まれた理由は、クローズドイノベーションの限界があったためだとされています。

イノベーションの変遷を追いながらオープンイノベーションに至る軌跡を見ていきましょう。

イノベーションの変遷

そもそも イノベーションとは、新しいアイデア、方法、製品、サービスを創出し、それによって市場に変化をもたらすプロセス のことです。

イノベーションは単なる技術革新だけでなく、ビジネスモデルや運用方法の変革をも含みます。

では、歴史的にイノベーションはどのようなプロセスで実現されてきたのでしょうか。イノベーションは個人研究者の努力から始まったと言えます。例えば、トーマス・エジソンやアレクサンダー・グラハム・ベルなどの発明家たちは、自身の研究成果を大企業に売り込み、その企業がその技術を商業化しました。こうした事例は人々の生活を大きく変えたイノベーションの原点となります。

その後、20世紀に入ると、大企業は自ら研究開発のための部署を設立し、基礎研究から製品開発までの全てのプロセスを社内で行う「クローズドイノベーション(自前主義)」を採用するようになりました。このアプローチは、企業内部のリソースと能力に依存しながら、イノベーションを推進する形となります。

クローズドイノベーション(自前主義)の限界

1980年代に入り、自前主義の限界が明らかになり始めました。急速な技術進歩と市場ニーズの多様化により、大企業がすべてのイノベーションを内部で完結することが難しくなったのです。さらに1990年以降、情報通信技術(ICT)の発展、グローバル化、新興国の台頭などにより、製品やサービスの開発に対する要求レベルは急速に高まりました。

この変化により、従来のクローズドイノベーション、つまり基礎研究から製品開発までの全てを自社内で行う手法は、次第に限界に達していきました。

このような状況の中で、企業は自社内だけでイノベーションの全てを賄うことが困難となり、必然的に外部の技術、知識、人材を活用せざるを得なくなりました。

競争に勝つためのスピードに対応し、新たな市場価値を創出するためには、外部との協力が不可欠となったのです。

クローズドイノベーションの限界が広く認知される中、2003年に米ハーバード大学経営大学院の教員であるヘンリー・チェスブロウ氏が発表した「OPEN INNOVATION―ハーバード流イノベーション戦略のすべて (Harvard business school press)」によって、オープンイノベーションの概念が注目されるようになりました。

オープンイノベーションは、企業が内部と外部のリソースを組み合わせてイノベーションを推進する手法であり、これにより企業は新たな競争力を獲得し、持続的な成長を実現することが可能となっていくのです。

今、企業はオープンイノベーションによる競争力強化が必要

近年、企業が競争力を維持し、成長を続けるためにはオープンイノベーションがますます重要となっています。その背景を経済的および社会的な観点から詳しく解説します。

製品ライフサイクルの短期化

経済産業省の調査によると、現代の市場では新製品やサービスの競争優位性が短期間で失われる傾向にあります。この主な原因は、技術の進化と消費者ニーズの急速な変化によるものです。

出典:「平成29年度科学技術白書」(文部科学省) (https://www.mext.go.jp/component/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2017/06/02/1386489_004.pdf)

このような環境下では、製品ライフサイクルの最適化と長期化が必要不可欠ですが、こうした取り組みが追いついていない企業では、事業の成長が鈍化してしまう傾向が多いです。

そのため、製品ライフサイクルの短期化を受け入れ、自社だけでなく外部のリソースを活用して迅速に研究・生産・市場化を進めることが求められています。

オープンイノベーションは、外部の知識や技術を取り入れることで、製品開発のスピードを加速させ、競争力を高める手段として有効です。

人口構造の変化

日本は人口減少期を迎えており、先進国の中でも、特に65歳以上の人口が全体の21%を占める「超高齢社会」の状態です。

このような人口構造の変化により、日本の生産力は新興国に比べて劣ってしまう可能性があります。

このような状況では、既存の枠組みにとらわれない新たな製品やサービスを、これまでにない手法で生産するイノベーションが必要です。

こうした観点からもオープンイノベーションは、外部からの技術導入や共同研究を通じて、革新的な製品やサービスの開発を促進し、企業の競争力を強化するための重要な手法といえます。

企業が現在の厳しい市場環境で競争力を維持するためには、オープンイノベーションの活用が不可欠です。

製品ライフサイクルの短期化や人口構造の変化といった経済・社会的な背景を理解し、外部リソースの活用を積極的に推進することで、持続的な成長を実現することができるでしょう。

日本全国でオープンイノベーションに取り組む企業が増加

近年、多くの企業が競争力を強化するために、オープンイノベーション専門部署を設立しています。
これに加えて、経済産業省をはじめとする政府の各機関がオープンイノベーションの推進に向けた様々な活動を展開しており、企業の取り組みを後押ししています。

オープンイノベーション促進税制

オープンイノベーション促進税制は、企業が外部のスタートアップ企業と協力するための大きな支援となっています。

この税制の概要として、国内の対象法人がオープンイノベーションを目的としてスタートアップ企業の株式を取得する場合、取得価額の25%を課税所得から控除することができます。この制度により、企業はリスクを低減しながら新たな技術やアイデアを取り入れることが可能となります。

出典:「オープンイノベーション促進税制(新規出資型)の概要」(経済産業省)(https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/open_innovation/230401_oizeisei_shinki_gaiyou_v02.pdf)

また、その他のオープンイノベーション推進施策も多岐にわたります。例えば、首相官邸ホームページでは、具体的な支援策や成功事例を紹介しており、企業のオープンイノベーション活動を積極的に支援しています。

参照ページ:オープンイノベーション促進税制 (METI/経済産業省)

参照ページ:オープン・イノベーションの推進| 成長戦略ポータルサイト

スタートアップ育成5か年計画

日本政府は、2027年までにスタートアップへの投資額を現在の10倍にすることを目標としています。この計画の一環として、アジア圏最大のスタートアップのハブを形成し、世界有数のスタートアップ集積地となることを目指しています。

この5か年計画では、オープンイノベーションの推進が3つの柱の一つとして掲げられています。これにより、企業はスタートアップとの協力を通じて革新的な技術やビジネスモデルを取り入れ、競争力を強化することが期待されています。

オープンイノベーションのメリット・デメリット

オープンイノベーションには、他社リソースを活用できるなど多くのメリットがありますが、一方で技術の流出や利益分配のトラブルといったデメリットも存在します。

オープンイノベーションのメリット

他社のリソース確保

オープンイノベーションの最大のメリットは、他社のリソースを活用できる点です。共創によって、優れた知識や技術を獲得することができ、新規事業をゼロから始めるよりも低コストで進めることが可能です。例えば、専門的な技術を持つ企業や研究機関との連携により、自社にはないリソースを効率的に確保することができます。

自社のコアコンピタンスの確立

他社のリソースを活用することで、自社の中核能力(コアコンピタンス)を確立することができます。他社に真似できない独自の技術やノウハウを得ることで、競争優位性を生み出すことが可能です。これにより、市場でのポジションを強固にし、長期的な成長を実現することが期待されます。

オープンイノベーションのデメリット

アイデアや技術の情報漏洩・流出のリスク

クローズドイノベーションと比較すると、オープンイノベーションにはアイデアや技術の情報漏洩・流失のリスクが伴います。特に、外部のパートナーと情報を共有する際には、データやアクセス権限の管理方法を事前にルール化し、適切に運用することが求められます。

利益分配のトラブル

オープンイノベーションでは、複数の企業や機関が関与するため、利益分配に関するトラブルが発生する可能性があります。各パートナーとの契約内容を明確にし、公正な分配方法を設定することが重要です。

オープンイノベーションを成功させるためには、これらの課題に対処するための具体的な対策が必要です。

オープンイノベーションの成功事例

ここでは、具体的な成功事例を紹介し、オープンイノベーションがどのように企業の成長に寄与するかを解説します。

デザイン性で勝負せず素材の開発から開始

東レとファーストリテイリングは、オープンイノベーションの成功事例として知られています。この両社は、素材開発に注力し、デザイン性ではなく機能性で差別化を図りました。その結果、ヒートテックやウルトラライトダウンといった製品が生まれています。これらの製品は、素材の開発から始めることで高い機能性を実現し、消費者に支持されています。

受注ゼロからビジネス拡大の活路を切り拓く

ドア用センサー企業である旭光電機は、高い技術力を誇るものの、20年前は経営危機に瀕していました。しかし、神戸大学の工学部と連携したことで、2つのビジネスチャンスを獲得し、事業を大幅に拡大しました。ひとつは介護ロボットや医療用ロボットに用いられる「ロボット用安心センサー」、もうひとつが「光学センサー」の開発です。中でも光学センサーの開発はJAXAからの声掛けで衛星開発のプロジェクトにも参入することとなり、新たな市場の開拓につながっています。

参照ページ:OPEN INNOVATION RULE OF SUCCESS 中小企業編

生活習慣改善に繋がる「パーソナルスコア」の認知拡大に寄与

ヘルステック企業のヘルスビットは、売上を伸ばしつつ原価を抑えるために、新規事業として健康関連の指標開発に着手しました。しかし、認知度が低いこともあり、大企業との接触が難しく、コストも増加するという課題に直面します。そこで、オープンイノベーションプラットフォーム・AUBAを通じて、某大手食品メーカーと連携することができました。これにより、認知度拡大にかかるコストが大幅に削減され、事業の成功に繋がりました。

参照ページ:パーソナルスコア「身体年齢」は健康産業におけるスピードメーター

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